2009年12月アーカイブ

 3回生のゼミ担当としては、学生の就職活動が気になる。民間企業出身の教員として、企業の生きた姿を折に触れ学生に伝えるようにしている。就活生に応対する企業やその担当者が何を考えて仕事をしているか、これを知っておくにこしたことはない。
 そんなことを考えていた時、TOYRO BUSINESS新年号が拙宅に届いた。本誌は池田銀行のグループ企業である株式会社自然総研が会員向けに発行する情報誌である。私も、かなり前に、監査役として当社の運営に参加したのがご縁で、毎月頂戴している。
 新年号らしく、池田銀行の取引先企業のトップの皆様が、新しい年を迎えるにあたっての思いをそれぞれの言葉で語っておられる。なかなかの好企画である。中でも印象的なのは、ダイキン工業・井上礼之会長の「2010年 時代の変革期に思う」と題するエッセイである。
 井上会長によれば、現在のような事態の変革期には、組織のマインドセットとして、?「夢と志なくして成長なし」、?「失敗なくしてイノベーションなし」、?「変わらないために変わり続ける」の3点が重要という。
 このメッセージを就活をはじめたばかりの3回生にどう伝えればよいだろうか。???に即して、考えてみた。
 第1は、企業や仕事の選択に夢と志を持つこと。夢・志が持てなければ、その志望動機の薄弱さを見透かされ、成功はおぼつかない。
 第2は、不合格になることを恐れてはならない。トライ・アンド・エラーの繰り返し。「数を打つ」ことで成功に至るというのが世の常である。
 第3は、志望する企業から支持・評価を得ていくために、自ら積極的に変わり続けていくこと。柔軟さと積極性はビジネスマンには不可欠な素養である。
 新年第1回目のゼミでは、以上のことをマインドセットとして伝えることとする。

 

 5月に詐欺罪で執行猶予つき有罪判決を受けた小室哲哉のエッセイである。
 小室哲哉といえば、渡辺美里のMy Revolution、安室奈美恵のCAN YOU CELEBRATEくらいしか思い出せない。同書によれば、806曲の音楽著作権をすべて自分が所有するかのように装って譲渡したという事実認定のようである。小室本人にとっては慙愧に堪えないところであろう。
 民事事件として処理されるとすればどうなるか、読み始めたきっかけであるが、この種の情報は同書から得ることはできなかった。しかし、事件の余韻がさめない中で語られた、1人の男(それも一級の職業人である)の本音に接することができ、音楽とはほとんど無縁である私も、最後まで読み通すことができた。

 そのなかの一節。
 「保釈中も、自分の曲をピアノで弾きながら、音楽世界を散歩していたのかもしれない。あの頃の自分と話がしたくて、時空を超えて会いに行っていたように思う。
 すると、いつも自分がひとりでなかったことに気がついた。自分の道は、自分が切り開いてきたと思い込んでいたけれど、いつもそばに誰かがいてくれた。助けてもらっていた。わかっているつもりでも、いつの間にか忘れていたのだ。だから、改めて思い直した。チャンスは自分で掴み取るだけじゃなくて、まわりの人たちから与えられるものでもある、と。
 まわりに認められる、必要とされるとき、チャンスは生まれる。そのチャンスを生かしてこそ、必要とされる喜び、僕にとってはかけがえのないそれを感じられる。
 そのことを忘れたことが『驕り』なのだったと理解した。」(同書79-80頁)

 逮捕から公判の過程の中で、エイベックスの松浦社長をはじめ、多くの人たちの支えが本当に身にしみたのだろう。これを伺わせる一節である。同書の後半部分にも、同じことが繰り返し書かれている。人間ぎりぎりの状況に陥らなければ、一番大事なことは見えてこないということなのだろうか。
 最近の若い人たちを見ると、自分のことだけしか見えていない者も少なくない。かくいう私もこれを非難する資格はないが、心すべきであろう。

 12月21日講義修了後、大阪司法書士会館まで出向き、司法書士実務研究会に出席した。この会は、京都学園大学法学部でも教鞭を執られた甲斐道太郎先生のご指導の下、司法書士の吉澤正勝先生が始められ、今回で271回目を記録するという大変古い研究会である。私もいつのころかお誘いいただき、何回か報告させていただいたことがある。
 当日は、「債務名義を取得している債権者が仮差押命令を申し立てることの可否」と題し、岡山大学法学部の吉岡伸一教授の報告が行われた。内容は、東京高決平成20・4・25、名古屋高決平成20・10・14(いずれも金判1323号55頁以下に掲載)の2つの高裁決定例に基づくものである。これらの決定は、判決などの債務名義を取得している債権者が債務者所有の不動産に強制競売の申立てをしても無剰余を理由に強制競売の手続きが取り消されるおそれがある場合、または取り消された場合に、債権者はその不動産に対して仮差押命令発出を申し立てることができるかどうかを問題にしたものである。
 民事裁判に勝訴しても、相手が判決に従って素直に支払わないとき、相手の所有する不動産などに対して競売の申立てをすることがあるが、その不動産に先順位の抵当権が設定されているなど、競売を実施しても費用倒れになる場合、裁判所はこの競売手続そのものの取消しを命じる(無剰余取消し、民事執行法63条)。最近こういった事例は多いようだが、せっかく裁判に勝訴しても何も取れなかったという悔しい思いが残る。そこで相手の財産・不動産に対して何らかの形で自分の権利の存在を示すためなのか(?)、仮差押命令の申立てがされたというのが本件事件である。仮差押命令の申立てにあたっては、「保全の必要性」が要求されるが(民事保全法20条)、すでに勝訴判決を得た者にその必要性があるのかどうか問題になるところである。吉岡教授の結論は、無剰余による取消しの可能性に止まる場合はともかく、取消しがあった場合は保全の必要性があるとして、仮差押命令を申し立てることができるという。
 無剰余取消しの可能性に止まる場合と、すでに取り消された場合、それほど状況は異なるものではないと思われるので、これを区別するのは適切ではないというのが私の考えであるが、それよりも、この種の仮差押命令がどれほどモノの役に立つのか、疑問を感じるところである。せっかく勝訴判決という債務名義まで取得したのであるから、最後まであきらめるべきではないということなのだろうか。

 遅ればせながら、BLOGをはじめることに致しました。
 もっと早い時期にという気持ちもあったのですが、将来のものぐさな性格が災いして、スタートを切れずにおりましたところ、京都学園大学法学部で教員BLOGを開始したのを機に参加させていただくことと致しました。
 ここで、まず第1に書きたいことは、学生とのやりとりです。教師としての日常、悩み、よろこびを素直な気持ちで綴ってみたいと考えております。第2に、法律を学ぶ者として気になったこと、またこれからやろうとすることなど、備忘録ふうに記録しておきたいと思います。
 いずれも、現時点では個人的なメモのたぐいでしかありませんが、少しずつ書き慣れていく中で、お読みいただく方への有益な情報発信ができればと考えております。末永いお付き合いをどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

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