高橋悦夫弁護士(弁護士法人高橋総合法律事務所代表社員)、吉岡伸一教授(岡山大学大学院社会文化科学研究科・法学部)に、私も編著者としてその末席に加わらせていただいた標題書籍からようやく手が離されそうである。全体にわたって目を通した後、自分の担当原稿の最終校正をたった今終えることができた。
本書は、高橋総合法律事務所で、月1回のペースで開催されている、「金融判例研究会」の延長線から生まれたものである。研究会のメンバーは、弁護士・金融機関法務担当・大学教員でもって構成され、多忙な日常業務の中で、20年余りにわたって研究会を維持された高橋悦夫弁護士のご努力に敬服するところである。私も約6?7年ぐらい前に仲間入りさせていただき、毎回、最新の実務動向を意識した鋭い議論の応酬にふれ、貴重な勉強の機会になっている。
ところで本書は、2008年の初めに構想が持ち上がり、内容の検討・目次のとりまとめに入ったのを思い出す。2007年にきんざいさんから出版させていただいた「時効管理の実務」のパーティで、次は相続について取り上げたいという私の発言が皆さんにご支持いただいたのはうれしい。執筆者諸氏にはほんとうにご多忙の中、原稿執筆に時間を割いていただいたことは感謝にたえない。かくいう私も、それほど順調に仕事が進んだわけではない。あわや債務不履行状態になるのをやっとの思いで乗り切ったのが正直なところである。
世の中には、相続ないし相続法をテーマにした書物は多い。ほとんどが相続対策的な実務書と民法・相続篇の理論を説くものである。我々がこの仕事に取りかかったのは、「取引相手方の相続」について、取引実務の観点から、きっちりとまとまった議論がそれほど多くは存在しないように思われたことである。やってみて、財産法ルールと身分法ルールが交錯する面白い分野であることに改めて気付かされる。
実務家を中心とする判例研究会の議論から生まれたという本書の出自から、本書は、財産法ルールと身分法ルールの交錯分野で、実務家なりに必要と感じている情報を、判例理論を踏まえて整理し、実務書として完成させたものである。取引相手方の相続問題に直面した実務家の利用に耐えるような、そしてそれ故に相続問題を取り扱った書物の中でもユニークな位置を占めることができればと密かに期待している。





