2010年5月アーカイブ

 高橋悦夫弁護士(弁護士法人高橋総合法律事務所代表社員)、吉岡伸一教授(岡山大学大学院社会文化科学研究科・法学部)に、私も編著者としてその末席に加わらせていただいた標題書籍からようやく手が離されそうである。全体にわたって目を通した後、自分の担当原稿の最終校正をたった今終えることができた。
 本書は、高橋総合法律事務所で、月1回のペースで開催されている、「金融判例研究会」の延長線から生まれたものである。研究会のメンバーは、弁護士・金融機関法務担当・大学教員でもって構成され、多忙な日常業務の中で、20年余りにわたって研究会を維持された高橋悦夫弁護士のご努力に敬服するところである。私も約6?7年ぐらい前に仲間入りさせていただき、毎回、最新の実務動向を意識した鋭い議論の応酬にふれ、貴重な勉強の機会になっている。

 ところで本書は、2008年の初めに構想が持ち上がり、内容の検討・目次のとりまとめに入ったのを思い出す。2007年にきんざいさんから出版させていただいた「時効管理の実務」のパーティで、次は相続について取り上げたいという私の発言が皆さんにご支持いただいたのはうれしい。執筆者諸氏にはほんとうにご多忙の中、原稿執筆に時間を割いていただいたことは感謝にたえない。かくいう私も、それほど順調に仕事が進んだわけではない。あわや債務不履行状態になるのをやっとの思いで乗り切ったのが正直なところである。
 世の中には、相続ないし相続法をテーマにした書物は多い。ほとんどが相続対策的な実務書と民法・相続篇の理論を説くものである。我々がこの仕事に取りかかったのは、「取引相手方の相続」について、取引実務の観点から、きっちりとまとまった議論がそれほど多くは存在しないように思われたことである。やってみて、財産法ルールと身分法ルールが交錯する面白い分野であることに改めて気付かされる。
 実務家を中心とする判例研究会の議論から生まれたという本書の出自から、本書は、財産法ルールと身分法ルールの交錯分野で、実務家なりに必要と感じている情報を、判例理論を踏まえて整理し、実務書として完成させたものである。取引相手方の相続問題に直面した実務家の利用に耐えるような、そしてそれ故に相続問題を取り扱った書物の中でもユニークな位置を占めることができればと密かに期待している。

 金融取引をめぐる法の研究を生活の糧にしている今の立場からすれば、民商法はなじみ深い法律である。現に大学では、ほとんどの時間、「民法」と「会社法」で明け暮れている。しかし、民商法だけでは、金融取引をカバーするのは不可能である。種々の特別法が金融取引の実務に大きな影響を及ぼす。そのような法律の一つとして「犯罪収益移転防止法」がある。金融機関の本人確認やマネーロンダリング防止態勢は、この法律の規定による。
 このうち、マネーロンダリング防止態勢について、犯罪収益移転防止法の規律は、金融機関がその業務において収受した財産が犯罪による収益である疑いがあると認められる場合に、金融庁にその旨の届出をしなければならないというものである。比較的単純な規律であるが、営業の現場で、届出を要する取引に該当するかどうかの判断は、実際問題として容易ではない。特にわが国の金融機関は、マネーロンダリング対策が脆弱との指摘をFATF(金融活動作業部会)の対日審査で受けており、体制の整備・改善は一金融機関の問題に止まらない。
 このような現状を受け、「ファイナンシャルコンプライアンス7月号」(銀行研修社刊)が、マネーロンダリング防止体制の構築と営業店対応について特集を組むことになり、私もその一部をお手伝いさせていただくことになった。担当するのは、「マネーロンダリング『疑わしい取引』の類型と営業店実務の勘所」である。新規口座開設時、開設後の預金取引、為替・交換・外為取引時、融資取引などから、「疑わしい取引」の届出にあたっての判断に関連して、営業店の対応が問題になった事例をとりあげ、実務の指針を提示するものである。
 すでに脱稿しており、ほどなく発刊されると思われるので、内容には触れないこととするが、かって金融機関に籍を置いた身からすれば、民商法の知識だけではカバーしきれない金融取引の大変さを思い知らされたかの仕事であった。

 

 

 

 その答えは、人生の発展途上の段階で自己分析をすると、「サークル」「アルバイト」「明るい」「リーダーシップがある」という、変わり映えのしない話題や能力に突き当たるだけ。それでは内定は無理。
 それではどうするか。「自分にあった仕事選ぶ力」「『脱ネット』情報収集力」「オトナ度をアップする力」「メンタル面を強化する力」「『脱マニュアル』でES・面接に対応する力」。これら5つのプロセスを、「自分の頭で考える」「自分で答えを出していく」。これを繰り返していけば、一歩ずつ着実に、「企業に選ばれる自分」に近づいていける。

 以上が本書の大まかな要約である。
 類書は多いが、良書だと思う。ベストセラーになった大沢仁・石渡嶺司「就活のバカヤロー」(光文社新書)にも同様の記述がある。厳しい時期であればあるほど、テクニックに頼り、早く結果を出したいと思う。しかし、誰もがこれを追及すれば、このようなやり方はかえってマイナスである。企業から評価される本物の実力をつけることこそ、学生生活を通して追求すべきであろう。

 たまたま、今日目にした三田紀房「エンゼルバンク・ドラゴン桜外伝(12)」(2010年4月、モーニングKC)には、桜木先生が内定が出ない就活中の水野さんにこんなことを言っている。
 「お前。人に相談しているから、内定が出ないんだよ。......自分で考えずに、人に対策聞いてるばっかりの奴なんて企業はいらねえんだよ。」「そんな奴はただのロボットだ。働いている人には一目でわかる。ああ、こいつは教わった通りプログラム通りしか動かない奴だって......」「企業が欲しいのはロボットじゃない。人が欲しいんだよ。」

 簡単なことだが、改めて強調されるのはそれなりの理由があろう。昨日のエントリーでも少し触れたが、そうではない状況があるからである。心すべきことである。


 

 昨日・7日は、京都の大学の共同事業、(財)大学コンソーシアム京都のインターンシッププログラムへの参加学生の面接を行った。本事業は京都地域の大学の教員30名がコーディネーターとして協力すもので、私もこの仕事に関わるのは、本年で3年目である。
 面接は、実習に向けた目的意識が明確か、実習を通して学び成長する意欲があるかなど、の観点から、受け入れ先企業に責任を持って推薦できる学生であるかどうかを判別するというものである。私は、午後2時から8時まで6時間にわたって、25名の学生の面接をした。
 2回生もいたが、3回生がほとんどである。就職活動をはじめるに当たって、働くということを実感したい、今の自分に企業社会へ参加できるだけの実力があるか、何が不足しているか、これらを確認したみたい、将来の職業生活の不安を一掃したいなど、参加の動機である。
 就職活動は、昨今、自己分析・エントリーシート・面接対策等々かなりマニュアル化しており、これが学生・企業を消耗させている面はあり得るが、今回面接した学生のほとんどは、今の自分と将来の自分とを対比し、何をすればよいかを自分たちなりにしっかりと考え、これをそれぞれの言葉で私たちに語ってくれた。正直疲れたが、後味はよい。
 今日会った3回生の皆さんが、新卒で就職を決める時期は、経済状況が今よりよくなっているようにも思えないが、そのような状況だからなおさら、しっかりと実力を身につけ、これを武器に乗り切っていこうとする。世の中そんなに甘くないよと言いつつ、それでもその若いエネルギーに期待したい。
 面接は7日・8日の両日行われる。その後、事務局で学生の希望と受け入れ先企業のマッチングを行い、受け入れ先の業種によって編成したクラスで、インターンシップの目標設定を中心にした事前学習のプログラムが6月から始まる。私が本年度コーディネータとして担当するクラスにどんな学生が来るか、今から楽しみである。

 

 連休を境にして徳志館周辺の景色も様変わりである。
 今日は2時間目スタートで、「会社関係法実務」の講義である。法を理屈で学ぶのではなく、実際の企業実務においてどのような運用されているか。ビジネス法学を表看板に置いた我が法学部の「らしさ」が見て取れる科目である。
 8年前、私が企業勤務から本学にご縁をいただき、2004年4月に62歳で他界された伊藤勇剛先生ご担当の半分をお引き受けする形で担当させていただいた、私の最初の講義科目である。おつきあい期間はちょうど1年であったが、伊藤先生なりの大学教員像を教えていただけたことは忘れられない。もっともっと教えていただきたいこともあったが、惜しまれる。
 ところで、本講義では、会社法の基礎知識を踏まえながら、企業の法務担当者が今やっている問題にできるだけ接近するように心がけている。今年の株主総会関係では、議決権行使結果の開示、独立役員の選任などに実務の関心が向いている。「なぜ」と「どうすればよいか」を学生達に問いかけながら、企業の法務部門で仕事をしているような感覚を持ってもらえるような授業にしたいというのが、私の目標である。第4回目、私も学生も、少しずつ慣れてきたようである。

 左は連休前に撮影した伊藤先生を偲んで植樹した桜の木。右は連休明けの徳志館周辺。


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 「内定取消」ではない。「内定辞退の強要」。重いテーマを取り扱っている。
 密室で何時間も面談して、とことん相手を追い込んでいき、内定辞退を迫る人事担当役員。なんとか結果を出すためには手段を選ばないというサラリーマンの論理が見え隠れする。私も数年前はこの世界の住人であったことを思うと恐ろしい。
 これに対して、間宮さんは、最後まであきらめなかった。と言えば、かっこいいが、やはりどうしようもない状態に陥ったようである。最後の最後で、企業に謝罪させ、2回目の就職活動を成功裏に終えたことは救いである。
 間宮さんは、本書で、現在の就活には、企業と学生のいたちごっこのようなところがあり、不合理のこともたくさんあると指摘する。4月から5月になって、内定がなかなか出ない学生は、私の回りにもいる。弱気になって、「どこでもいいから」と思う気持ちが、むしろ企業に利用されているように感じる。
 ところで、この問題を法律面から見るとどうなるだろうか。有名な最高裁判決(最高裁第二小法廷昭和54年7月20日判決)によれば、採用内定通知によって、「始期付解約権留保付の労働契約」が成立し、「内定取消」の適法性は、留保解約権の適法な行使かどうかを問題にして判断する。手元の労働法の体系書(荒木尚司『労働法』283頁以下(2009年7月、有斐閣))を見ても、特別の問題はない。安定した法理が形成されているようである。リーマンショック以降の急激な景気悪化に伴う企業業績の変動は、これが企業の存立を左右するものでない限り内定取消の理由にならないことは明かである。これを背景に、内定取消を行った企業名の公表制度も昨年からスタートしている。 
 こういった法律上・制度上の問題を避けるため、「内定辞退」を内定者に持ちかけることはある程度はやむ得ないとしても、これが「内定辞退の強要」ということになれば、当該企業にとってもコンプライアンスにかかる問題といった認識が正当であろう。一連の偽装表示事件で窮地に陥った企業と同様のリスクがある。

 最後に間宮さんからのメッセージを本書から。
 「景気は上向かず、就職活動は相変わらず厳しい。内定がなかなか出ず、終わりがないように感じるかも知れない。でも、信じていれば必ず結果が出せると、この本を読み終えたときに思っていただければ、こんなにうれしいことはない。」

 間宮さんのこれからの職業人生が稔り大きなものになることを祈りたい。
 

 昨日30日は東京出張。金融機関のコンプライアンスに関係する問題について、地方銀行のご担当の方々、弁護士、監査法人のリスクマネジメントを専門にするコンサルタントの先生方とほぼ1日にわたって議論した。帰りの新幹線の中でチェックした商事法務のメルマガ経由で、同じくコンプライアンス問題である工事請負契約約款等へ組み込むことになる「暴力団排除条項に関する参考例(ひな型)」が日本建設業団体連合会から公表されたのを知った。

 この問題については、平成19年6月19日犯罪対策閣僚会議幹事会申合せ「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」の決定が本格的取り組みの発端であったと思う。金融機関では、金融庁の監督指針の改定を経て、銀行取引約定書に規定する暴力団排除条項の参考例が平成20年11月25日付で全銀協から公表され、今やほとんどの金融機関で採用されている。契約当事者間の約定によって、反社会的勢力の排除を図るもので、この点は日本建設業団体連合会の参考例も同様である。(なお、全銀協は、平成21年9月24日に、普通預金取引・当座勘定取引・貸金庫取引についても、同様の措置を提案している。)
 しかし、両者いくつかの点で違いがある。例えば、全銀協の銀行取引約定書では、取引先または保証人に反社会的勢力の属性要件に該当しないことおよび行為要件に該当することを行わないことを表明・確約させ、これに反した場合は銀行の請求により貸出金の期限の利益を失う旨を規定する。これに対し、日本建設業団体連合会の工事請負契約約款では、反社会的勢力の属性要件または行為要件に該当することを請負契約の解除事由とする。
 具体的運用場面でどのような違いが生じるか、それぞれの条項の法的効果の問題として検討が必要と思われるが、他日を期したい。

 

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