「内定取消」ではない。「内定辞退の強要」。重いテーマを取り扱っている。
密室で何時間も面談して、とことん相手を追い込んでいき、内定辞退を迫る人事担当役員。なんとか結果を出すためには手段を選ばないというサラリーマンの論理が見え隠れする。私も数年前はこの世界の住人であったことを思うと恐ろしい。
これに対して、間宮さんは、最後まであきらめなかった。と言えば、かっこいいが、やはりどうしようもない状態に陥ったようである。最後の最後で、企業に謝罪させ、2回目の就職活動を成功裏に終えたことは救いである。
間宮さんは、本書で、現在の就活には、企業と学生のいたちごっこのようなところがあり、不合理のこともたくさんあると指摘する。4月から5月になって、内定がなかなか出ない学生は、私の回りにもいる。弱気になって、「どこでもいいから」と思う気持ちが、むしろ企業に利用されているように感じる。
ところで、この問題を法律面から見るとどうなるだろうか。有名な最高裁判決(最高裁第二小法廷昭和54年7月20日判決)によれば、採用内定通知によって、「始期付解約権留保付の労働契約」が成立し、「内定取消」の適法性は、留保解約権の適法な行使かどうかを問題にして判断する。手元の労働法の体系書(荒木尚司『労働法』283頁以下(2009年7月、有斐閣))を見ても、特別の問題はない。安定した法理が形成されているようである。リーマンショック以降の急激な景気悪化に伴う企業業績の変動は、これが企業の存立を左右するものでない限り内定取消の理由にならないことは明かである。これを背景に、内定取消を行った企業名の公表制度も昨年からスタートしている。
こういった法律上・制度上の問題を避けるため、「内定辞退」を内定者に持ちかけることはある程度はやむ得ないとしても、これが「内定辞退の強要」ということになれば、当該企業にとってもコンプライアンスにかかる問題といった認識が正当であろう。一連の偽装表示事件で窮地に陥った企業と同様のリスクがある。
最後に間宮さんからのメッセージを本書から。
「景気は上向かず、就職活動は相変わらず厳しい。内定がなかなか出ず、終わりがないように感じるかも知れない。でも、信じていれば必ず結果が出せると、この本を読み終えたときに思っていただければ、こんなにうれしいことはない。」
間宮さんのこれからの職業人生が稔り大きなものになることを祈りたい。






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