タイトルは、6月1日の日経夕刊に報道された最高裁判所第三小法廷平成22年6月1日判決である。
本件は、Y(フッ素製品の製作・販売を事業目的とする大手ガラスメーカーの子会社)との間で売買契約を締結して土地を買い受けたX(足立区土地開発公社)が、売買目的である土地の土壌に、人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるものとして売買契約締結後の法令に基づき規制の対象となったフッ素が基準値を超えて含まれていたことから、これが民法570条にいう「瑕疵」に当たると主張して、土地の売主であるYに対して損害賠償を求めた事件である。
本件のポイントは、売買契約締結後の法令に基づき規制の対象となったフッ素が基準値を超えて含まれていたことであり、売買契約締結時の法令に基づく規制に基づくものではない。
原審の東京高裁平成20年9月25日判決は、売買契約の目的物である土地の土壌にフッ素が含まれていたところ、これは、売買契約締結当時の取引観念上は有害であると認識されていなかったが、その後、有害であると認識され、新たに法令に基づく規制の対象となった場合であっても、フッ素が新たな法令に基づく規制の限度を超えて土壌に含まれていたことは、民法570条にいう瑕疵に当たると言う。この理由は、居住その他の土地の通常の利用を目的として売買される土地の土壌に、フッ素等が危険がないと認められる限度を超えて含まれていないことは、上記土地が通常備えるべき品質、性能に当たるというものである。つまり、土地が通常備えるべき品質等が、事後的に判断されたわけである。
契約時・引渡時には「瑕疵」と考えようがなかったことから、この高裁判決の論理について疑問を呈する見解もいくつかある。
今回の最高裁は、この点に配慮をしたのであろうか。
(1)売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては、売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべこと、(2)フッ素が、それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるなどの有害物質として、法令に基づく規制の対象となったのは、本件売買契約締結後であったこと、(3)本件売買契約の当事者間において、本件土地が備えるべき属性として、その土壌に、フッ素が含まれていないことや、本件売買契約締結当時に有害性が認識されていたか否かにかかわらず、人の健康に係る被害を生ずるおそれのある一切の物質が含まれていないことが、特に予定されていたとみるべき事情もうかがわれないこと等を理由にして、「本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても、そのことは、民法570条にいう瑕疵には当たらないというべきである」とした。
重要判例の1つとして記録に留めておきたい。







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