法務の話題の最近のブログ記事

 今後生じる法的問題を考える雑誌の特集もいくつか拝見するようになった。その中の一誌「金融法務事情2011年4月25日号(1920号)」に拙稿を掲載させていたたいた。
 現在実施されている金融機関の対応は、金融庁のサイトに簡潔なまとめがあるが、私の仕事は、「震災と金融取引実務 ―阪神・淡路大震災の当時に考えたこと」と題するもので、16年前の阪神・淡路大震災を頃をひたすら振り返るものである。拙稿がなにかのお役に立てればと願いつつまとめさせていただいた。
 以下は、その書き出し部分である。

 3月11日午後2時46分、M9・0の地震が東北地方を襲った。それから1箇月余りが経過し、少しずつ復興へ向かっているが、市民生活や経済活動が元通りの状態になるのは容易ではない。このような状況の中では、金融機関もその役割を果たすため、通常では想定されないような業務の対応に直面する。
 16年前の阪神・淡路大震災の際も、金融機関は、四囲の状況と自らが置かれている立場との間で、取引先顧客のために、何を・どうすればよいか、悩みつつその役割を果たしてきたと思う(その貴重な記録として、さくら銀行篇『阪神・淡路大震災に学ぶ銀行の事務対応』(1996年、金融財政事情研究会)がある)。以下では、阪神・淡路大震災の際に、被災地の地銀の法務担当として筆者自身が考えたこと、経験したことから、今回の震災と復興に向けた動きの中で生じるあろう金融機関の業務について、参考にしてもよいと思われる事項いくつかを取り上げてみたい。

 

 全国株懇連合会編「全株懇モデル〔新訂3版〕」が、このほど商事法務から刊行された。本書の初版は2005年、新訂版が2007年、新訂2版が2009年であり、今回で3 NEC_0006.JPG回目の改訂である。
 上場会社の定款・株式取扱規程・招集通知・事業報告などの書式や株主総会運営の手引きを収録したものとして、存在感を持っているようである。今回は、議決権行使結果開示の臨時報告書の記載例、株式取扱規程モデル等の改正が収録されたほか、新訂2版以降の法令の改正についてメンテナンスがされている。

 本書のそもそもの成り立ちは、全国株懇連合会定時会員総会の分科会審議テーマの研究報告が集められたものである。東京株式懇話会、大阪株式懇談会が1年がかりで研究した成果を総会の場で発表する。私も、平成13年・14年の総会で、大阪株式懇談会を代表して発表の機会をいただいた。その後、大学の研究者としての職を得て以降も、大阪株式懇談会の皆様のご厚意で、特別委員という肩書きをいただき、毎年の研究報告のとりまとめのお手伝いをさせていただいている。大阪を代表する企業の法務・株式担当の皆様を相手に議論するのは大変であるが、私にとって、会社法とその実務を勉強する貴重な機会である。

 さて、私が特別委員としてお手伝いさせていただいた大阪株式懇談会の報告テーマを年度順に追ってみれば次のとおりである。

 平成16年 改正商法等に基づく招集通知・営業報告書作成の実務
 平成17年 取締役、執行役および監査役の報酬・退職慰労金等の実務
 平成18年 (会社法下における株主総会実務)株主総会の日程と運営
 平成19年 剰余金の配当に係る実務対応
 平成20年 株主提案権に係る実務対応
 平成21年 インサイダー取引規制に係る実務対応
 平成22年 株主代表訴訟に係る実務対応

 「全株懇モデル」の初版には、平成16年の報告が収録されているだけであったが、現在は、平成18年・平成19年の報告も併せて収録されている。もちろん、その後の法令改正はフォローされている。会社法実務に携わる方々による、実務家のための参考書として、広く参照していただければ幸いである。

 ところで、本年は、「法定公告・法定開示の実務」がテーマである。
 法定公告というほとんど存在感がなくなっている制度と、金商法による法定開示という近年ますます充実されつつある制度、このあたりの対比を実務の中でどうこなしていくか、考えていけば結構面白い。

 

 

 本日(2月28日)付け日本経済新聞朝刊「法務インサイド」欄にこの問題が取り上げられた。
 内容は、2月17日の福岡地裁の判決(公刊物未登載)で、事業継続にあたって必要な負債は新設会社に移されたが、それ以外の債務は抜け殻状態の分割会社に残されたのに対して、新設会社の法人格を否認して、分割会社の債権者に6億4000万円の支払を命じられた旨が紹介されている。そして、濫用的な会社分割が会社法では容易に認められてしまうという法の不備が指摘され、法制審の会社法部会に改正提案が出されている旨が報告されている。
 濫用的会社分割に対する分割会社債権者の対応として、詐害行為取消権(民法424 条)の行使、商号等が続用された場合に会社法22条1項の類推適用、取締役等の責任追及(会社法429 条1 項)、法人格否認の法理等が使われる。2月17日の福岡地裁判決は、法人格否認の法理を用いて、会社分割による新設会社は、分割会社と同様の法的責任が課されると考えたものと推測される(公表されている先例として、福岡地判平成22・1・14金融法務事情1910号88頁がある)。
 法制審議会会社法制部会では、平成22年12月22日開催の第8回会議で検討が行われ、議事録等も公表されている。また、研究者の論考も、最近増えてきた。
 この問題については、1月27日2月2日に続く、3回目のエントリーであるが、ますますこの問題から目が離せなくなりそうである。

 2月22日の報道によれば、最高裁判所第三小法廷から、「相続させる」旨の遺言は、当該遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、遺言者が代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限りその効力を生じない、という新判断が示された。判決文は、http://kanz.jp/hanrei/detail.html?idx=6792を参照いただきたい。
 この論点は、我々の「取引先の相続と金融法務」においても、吉岡伸一先生が287頁で解説しており、遺言で指定された相続人が相続開始時にすでに死亡していたときは、その指定された相続人の相続人が被相続人の財産を相続すると考える東京高裁判決に対して、今回の最高裁のように考える判決も見られ、下級審判例は分かれているという指摘をしている。
 ことが相続人の範囲の確定にかかる問題だけに、実務でも悩ましいところであったが、この点について最高裁が一定の方向を示したことは、喜ばしいことである。判旨が、「遺言者が代襲者等に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り」という限定をつけていることも、前記東京高裁判決のような場合が該当すると考えれば、無理がなさそうに思われる。
 重要判例として記録しておきたい。

 今月末に刊行予定の「ファイナンシャルコンプライアンス2011年4月号」(銀行研修社)において、「事例研究―高齢者預金取引とコンプライアンス」と題する特集の一部に、「高齢者預金の相続」として、次の7つの事例を解説させていただいた。窓口でお仕事をされておられる銀行員の皆様方は、このような場合は、どう対応をされるだろうか。答えを出すのは容易ではないと思う。

 ファイナンシャルコンプライアンス誌には、民法の考え方を基本にした実務の対応を私の答えとして提示させていただいた。確認のため、お読みいただければ幸いである。
 
(1) 甲支店に多額の預金をしているXが死亡した。法定相続人は妻Aと子のB・Cの3名である。このような場合において、相続人からXの預金の解約を求められたが、甲支店はどのような対応をすればよいか。なお、Xは遺言書を残していない。
(2) 甲支店に多額の預金をしているXが死亡した。法定相続人はA・Bの2名であるが、このうちAは多重債務者である。Aは、相続をして自分の財産を増やしても債権者に持っていかれるだけと考え、Bのために相続を放棄した。これを知ったAの債権者は、放棄の取り消しを求めて訴訟をした。このような場合、Bへの相続預金払戻しについて、甲支店はどのような対応をすればよいか。
(3) 甲支店の取引先Xが死亡した。Xは甲支店と預金取引をしていたが、その一方で借入金も甲支店のほか、他の金融機関からの分も含め多額であった。そこで、相続人A・B・Cは限定承認をすることを考えている。相続人が限定承認を行った場合、甲支店はどのような対応をすればよいか。
(4) 甲支店に多額の預金をしているXが死亡した。Xの法定相続人はA・B・C・Dの4人である。このうちの1人であるAが遺産分割協議に参加せず、甲支店に対して自己の法定相続分相当額について払戻請求をした。甲支店はどのような対応をすればよいか。
(5) 甲支店に多額の預金を有しているXが死亡した。そこで、相続人の1人であるAから甲支店に、葬儀費用として相続預金の一部の払戻し依頼を受けた。相続人は、Aほか5名であるということであったので、甲支店は相続人全員の同意書の提出を求めたところ、海外に居住して容易に連絡がつかない者もおり、甲支店の申出に応じるのは不可能という。甲支店はどのような対応をすればよいか。
(6) 甲支店の預金取引先Xが死亡し、遺言執行者に選任された弁護士Aから、X名義の預金の払戻請求が行われた。甲支店はどのような対応をすればよいか。
(7) 甲支店と貸金庫取引を行っているXは、その取引の代理人としてA(Xの妻)を定め、甲支店に届出していた。Xの死亡後、死亡の届け出が甲支店になされる前に、AがXの代理人として貸金庫を開扉して、X名義の有価証券類を持ち出し売却してしまった。これに対して、他の相続人から、甲支店の責任を問うクレームが申し立てられた。

 

 「所有権留保」と呼ばれる担保手段は、割賦販売取引においてよく用いられている形態である。割賦販売で販売した商品の所有権を、代金完済まで売主またはクレジット業者が留保しておくもので、ほとんど手間がかからない。取引社会のニーズが生み出した、民法典に規定されていない、「非典型担保」の一種である。
 この所有権留保の担保権者(「留保所有権者」と呼ばれる。)としての地位について論じた拙稿をNBL2011年2月15日号(947号)に公表させていただく予定である。非典型担保に関する私の研究としては、「集合動産譲渡担保権設定者の担保目的物処分とその効力?最一小判平成18・7・20が明らかにした法理と実務の対応」NBL867号(2007年)に続くものである。
 本稿は、所有権留保の目的物である自動車が駐車場に放置されていた事件に関して、その自動車の留保所有権者であるクレジット業者に、放置自動車の撤去義務と不法行為責任を認めた最三判平成21・3・10民集63巻3号385頁(本判決の研究としては、京都学園法学2010年第2号119頁以下参照)に基づき、第三者(本件では駐車場のオーナー)に対する留保所有権者の担保権者としての義務・責任について考察し、これを前提に実務上の留意事項を検討したものである。
 所有権留保の目的となっている自動車が駐車場に放置されていたような場合、留保所有権者は、その自動車の撤去義務は買主にあると考え、自身は関係ない考えていたはずである。しかし、最高裁判所は、この理屈は留保所有権者と買主との間で成立するが、第三者との間でその成立を認める理由はない。第三者(駐車場のオーナー)は、留保所有権者であっても買主であっても、同じように放置自動車の撤去を求めることができる。これに応じて、誰が撤去するかは、留保所有権者・買主の間で決めてください、と考えたのであろう。従来あまり問題にならなかったが、至極当然のことである。
 このような問題意識を持ちつつまとめ上げたのが拙稿である。2011年の6番目の仕事になる。

 NBL掲載にあたって、同誌編集部に大変お世話になった。思わぬ誤りをご指摘いただいたり、3回にわたる筆者校正を出力いただいたりで、本当にありがたいことだと思っている。厚く感謝申し上げたい。


 

市民と法第67号に「詐害的会社分割と分割会社債権者の対応」Scan1.JPGと題する拙稿が掲載された。それも特集2としての取り上げられ、この問題に関する第一人者・後藤孝典弁護士の論文と並べて掲載された。後藤先生の論調については、賛成しがたいところを感じているが、そのコメントについては、他日を期したい。
 併せて、昨日、大阪司法書士会の研修会で「詐害的会社分割と分割会社債権者の保護」と題する講演を行った。約200名の参加者のもと、日頃の教室の様相とは随分異なる環境ではあったが、私見も交え、話させていただいた。講演レジュメ 100201司法書士会・会社分割.pdfを貼り付けておくので、興味のある方はご覧いただきたい。

 

110212追記

講演レジュメについて、当日使用した図表を挿入したほか、若干の誤植訂正を行った。


 

 法律時報2011年2月号(通巻1031号)および京都学園法学2010年第1号(通巻62号)に標題に関する論考を掲載した。いろんな事情があって公刊が遅れ遅れになり、この問題に関する四囲の状況が騒々しくなるにつれ気になっていたが、来月初めに刊行される予定の市民と法第67号(2011年2月号)に掲載の論考とともに、ひととおり私の分析および意見を公表することができた。実務先行で関心が高まっているにもかかわらず、しっかりとした論文がそれほど出てきていない段階で、おそらく大学の研究者の手によるものとして最初の業績になったのではないかと思う。
 私としては、一応この問題については一区切りつけたいと考えていたが、最近手元に届いた金融法務事情1914号(2011年1月25日)において、全国倒産処理弁護士ネットワークの立法提案および法制審議会会社法部会第8回会議(平成22年12月22日)の配付資料が掲載され、また、会社分割に関しては第一人者の地位にある後藤孝典弁護士の論文(ビジネス法務2011年3月号78頁以下)が公表され、これらへの対応は、タイミングを見て、何らかの形でやっておきたい(「再論」という形で公表したいと考えている。)。
 全国倒産処理弁護士ネットワークの立法提案および会社法部会の資料は、あくまで会社法のルールの中で、分割会社債権者を害する「濫用的」会社分割を防止するシステムを組み込むことを意図するようである。この点について、私は、現行の会社法のルールの中では、「濫用的」会社分割(私は、これを「詐害的」会社分割として論じた。)はやむを得ないこととし、分割会社債権者の保護の問題は、民商法の一般ルールで処理すべきとして、最近の東京地裁・東京高裁判決で示された、会社分割に対する詐害行為取消権行使を支持した。後藤弁護士の論文は、私が基本的に賛成した東京地裁・東京高裁判決の問題点を挙げ、これらに反対するものである(私も、全面的に賛成しているわけではないことについては、前記の論考をご参照いただきたい)。
 何はともあれ、会社法のシステムが濫用的もしくは詐害的な使われ方をし、これによって債権者が害されるという現実は見過ごすわけにはいかない。各処で活発な検討がされることを期待したいし、私も相応の係わりを持っていきたいと思う。

 「集団的消費者被害救済制度の構築に向けて」が本シンポジウムのテーマである。
 「集団的消費者被害救済制度研究会報告書の概要」(三木浩一・慶應義塾大学)、「集団的消費者被害の救済と民事実体法」(鹿野菜穂子・慶應義塾大学)、「集団的消費者被害の救済と手続法」(町村泰貴・北海道大学)、「集団的消費者被害救済制度と行政法」(中川丈久・神戸大学)、「集団的消費者被害救済制度に向けた実務からの提言」(大高友一・弁護士)、「適格消費者団体から見た現状の問題点と新制度への提言」(磯辺浩一・消費者機構日本)、以上6本の個別報告、ハンス・W.ミクリッツ教授(ヨーロッパ大学研究所(フロレンツ)教授、国際商事・消費法学会会長)・ノルベルト・ライヒ教授(ブレーメン大学名誉教授、元国際商事・消費法学会会長)のゲストスピーチを拝聴させていただいた。現在法案の審議が進められている「集合訴訟」のみならず、「行政処分」(課徴金制度など)、「刑事手続き」、「破産申立て」等々による消費者被害の救済が議論されのは、実践的であり、さすが本学会ならではの醍醐味である。
 「集合訴訟」については、現在の消費者契約法に基く差止請求制度は、損害賠償請求まで及ぶものではないことから、発足当初からその限界が指摘されてきたが、これを改めるもので、消費者庁の研究会報告書がこのほど公開されたばかりである。本シンポジウムの第1報告者である三木先生のお名前を拝見する機会が最近とみに多くなっているのも、集合訴訟制度の実像が明らかにされてきたためであろう。いくつかの方式がある中で、被告の責任などの共通争点を第一段階で処理し、原告個々の損害を第二段階で取り扱う「二段型」(研究会報告書のA案)がメインになるようである。
 ただ、その制度設計において、詰めるべき点は数多くありそうである。本シンポジウムの議論を聞いていていくつか気になる点があった。ここ数年の間に法制化されるらしいが、それまでの間に私なりに考えてみることとしたい。

 平成21年6月の「金融商品取引法等の一部を改正する法律」により、銀行法等に、金融ADR制度(「指定紛争解決機関」として規定されている。)が追加された。施行は22年10月1日であるが、すでに金融庁は監督指針・金融検査マニュアル等の改正を終えており、これを踏まえた金融機関の態勢整備構築が現状の課題である。
 本制度の実施により、金融機関の苦情対応は、少しばかり変化するのではないか。従前、原則として顧客と金融機関の間で落としどころを探り、うまくいかないときは民事訴訟で白黒をつけるという方法から、指定紛争解決機関(全国銀行協会が指定申請を行っているようである。)の紛争解決手続による方法ができたことに伴う変化である。
 これを前提に、金融機関の苦情対応は、どのようにすればよいだろうか。個別事例ごと考える必要があろう。今回、ファイナンシャルコンプライアンス10月号(銀行研修社)で、「法令改正と金融取引事例集<金融ADR制度と苦情対応>」とする特集が組まれ、私も、預金取引を中心とするいくつかの事例について検討させていただく機会を頂戴した。
 無通帳・無印鑑の払い戻しを行なった預金者本人が死亡したので、この払戻しは証拠がないので無効であるという申出、正規の遺産分割協議書の提出がないのに、特定親族だけの遺産分割協議書で預金を払い戻したのは無効であるとする親族からの訴えなど、6項目である。
 それぞれについて金融機関の民事責任を確認しつつ、金融ADR制度の存在を前提とする顧客対応について、金融庁の監督指針なども踏まえながら解説したつもりである。来月初めには発刊されると思うので、ご興味のある方は、一読いただければ幸いである。

 

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