正月休みに、アンソニー・ギデンズ、渡辺聰子『日本の新たな「第三の道」』(ダイヤモンド社・2009)を読んだ(第4章がギデンズ氏の論文、その他の章は共同研究の内容を渡辺教授が執筆したもの)。最近イギリス会社法に関心を持っている関係で、イギリスに関わりの深いものを手に取ることが多くなった。言うまでもなく、ギデンズ氏は英国ブレア政権の「第三の道」改革を理論的に主導した現代社会学の権威であるが、本書は渡辺教授(上智大学)が、LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)に客員教授として滞在した時のギデンズ氏との共同研究の成果である。
この著作は社会学系のものであり、むろん法律論に直ちに結びつくものではないが、会社法など企業法を中心に教育・研究に当たっている者にとっても、企業環境を取り巻く諸環境・価値観がどこに向かっていくのか、向かっていけばよいのか、など無関心ではいられない事項を含んでいる。
既に、ギデンズ氏の『第三の道』、『第三の道とその批判』などの翻訳も出ているし、山口二郎『ブレア時代のイギリス』(岩波新書)も興味深く読めた記憶がある。しかし、この著書は、「日本において「第三の道」政治をどのようにして実現するか」という問題意識で執筆されており、ある意味待望されていたものといえよう。
著者達は、日本は、欧米が経験してきたような「自由市場主義」と「社会民主主義」の間を振り子のように行ったりきたりする過程を繰り返すことがあってはならないと主張する。その理由は、日本においては、市場原理も十分に機能せず、公的福祉の整備も遅れているためであるとする。自由市場主義と福祉国家主義の弊害を乗り越え、両者をより高い段階で統合するという「第三の道」が、欧米とはまったく異なる文脈において日本では重要な意味を持つとの主張である。
本書も述べるように、革新政党の階級政党としての役割は終焉したし、保守主義も危機を迎えていることは事実であろう。職業階層もゴールドカラー(専門職、管理職、技術職)の増大によりかつてとまったく異なるものとなっている。
日本においても政権交代が起こったが、どの政党であれ政権党たりうるには、(困難な課題ではあるものの)必要とされる経済競争力と社会的公正の政策組合せを、多様な各層の有権者に対し訴え、支持を得る必要があるということであろうか。





