そもそも株式会社とは

  本日、秋学期の基礎演習(1回生)を終了した。本学では、少人数(20人以内)での演習による導入期教育に力を入れているが、その教科書は法学部教員が全員で執筆したものを使用している(京都学園大学法学会編『法学の扉[第3版]』(成文堂))。1回生の基礎演習では、長文の要約の仕方や、レポートのまとめ方からはじめ、裁判システムや法情報の調べ方に進んでいく。この秋学期は、法的思考に慣れると題し、授業では「米国マクドナルドでのコーヒー火傷事件」「エレベーターの取替費用」「交通事故」などを題材に演習を行い、最終回が「会社はだれのものか?」であった。どの回の授業でも、多面的に考えたり、ゼミ仲間の意見に同感したり、あえて反論することを考えたりというようなことに注意して進めてきたつもりである。岩田規久男『そもそも株式会社とは』(ちくま新書・2007)は、授業の準備の一環として通読してみたものである。

 今までの授業では、新書・文庫など比較的学生が通読しやすいものとして、岩井克人『会社はだれのものか』(平凡社・2005)、伊丹敬之『人本主義企業』(日経ビジネス文庫・2002)、神田秀樹『会社法入門』(岩波新書・2006)、ロナルド・ドーア『誰のための会社にするか』(岩波新書・2006)などを挙げてきたが、岩田先生の本書も通読しやすいものとして挙げておいてよいであろう(同じ、ちくま新書の『「小さな政府」を問い直す』などもお勧めである)。

 岩田先生は、「会社はだれのものか論」は、利害関係者の間に誤解を生みやすく、お互いの感情を逆なでしあって、実りある結論に到達できないとする。その上で、経済学者の視点で、3つの市場の法則「交換の法則」、「誘引の法則」「希少性の法則」を使って論理を進めていくのである。 会社の主権者が株主であるとしても、株主は「交換の法則」に縛られているため、従業員や取引先や消費者などの交換相手の利益に配慮せざるを得ない。「誘引の法則」と「希少性の法則」に従えば、株主には能力のある経営者や従業員に正当な報酬で報いる誘引がある。従って、株主主権を「株主丸取り」」などと恐れることはない、とされるのである。異論もあろうが、「株主主権型企業統治の問題点とその改革」が最終章に置かれており、新書としてバランスのよい構成になっている。

 いずれにしろ、企業法を学ぶ学生の皆さんには、法学をしっかり学ぶことはもちろんであるが、周辺学問分野である経済学や経営学などにも幅広く興味を持ってもらいたいものである。私も20年以上企業で働いた経験があるが(うまくやったかどうかは自信がない)、当たり前のことながら現実の問題は常に、複合・応用・学際的なものだからである。

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このページは、小野里 光広が2010年1月13日 20:14に書いたブログ記事です。

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